「情報公開を体験する税理士の会」(代表 長谷川博)は、本年4月23日に税務行政に関する情報開示請求を体験しました。筆者は東京地方税理士会「WTO・規制緩和対策委員会」のメンバーでもあるので、委員会報告を兼ねて紹介します。今後、いろんな行政機関に対する情報公開請求の参考になれば幸いです。(6月6日文章一部追加・改訂)


「税務行政に関する情報公開」請求の体験-報告

(総務省「情報公開総合案内所」から横浜中税務署へ)

 2001年4月23日(月)、税務行政に関する情報公開請求を体験した。「情報公開を体験する税理士の会」(代表 長谷川博)として情報公開の実地見聞をしてきたのでその報告をする。(以下表現は報告書形式。)

1.10:30am、横浜中税務署の入っている横浜地方合同庁舎へメンバー4人集合し、まずは3Fの総務省の神奈川行政評価事務所と同室にある「情報公開総合案内所」へ出向いた。

(案内所は、各都道府県の総務省の関連施設内にある。)



            (合同庁舎入口案内板)

 室長と担当者が案内所の1室で「情報公開制度利用の手引」(パンフレット)で質問に答える形で応対した。訪問の趣旨説明、団体による請求についてなどの話。


           (情報公開総合案内所にて)

@開示請求書の記載の仕方

A開示請求手数料(1件300円)と閲覧費用(100枚までごとに100円)、写しの交付費用(1頁20円)の説明。方法、分量に応じて計算した額が300円に達するまでは無料、300円を超えるときは、300円を差引いた額が開示実施手数料となる。

Bその他、質疑応答。

  最後に、案内序内でのメンバーを入れた写真撮影はOKであった。


           (横浜中税務署案内板)

2.11:00am、合同庁舎2Fの横浜中税の総務課へ向い、別に用意された「情報公開窓口」で総務課長補佐と総務係長の応対を受け、請求の内容を具体的に説明し次の5件の開示請求をした。

@資料調査課等の調査実施要領の制定について(事務運営方針)(平成12年6月29日付け課料3−6ほか8課共同)
−これは、昨年の総務庁行政監察報告書にあったもの。

A税務調査対象選定基準のわかる文書(最新のもの)

B税務調査における事前通知の実施状況が分かるもの(最新3年)

C苦情事案関係書類、年度別苦情受理件数処理件数が分かるもの(最新3年)

D税務調査における事前通知をしない場合の基準が分かるもの(最新のもの)

これらは、@を除き横中署での情報に対するものである。

 横中署での情報公開請求は、われわれが初めてということである。相談はあったが請求は初めてとのこと。

 窓口のある部屋には、ノートPCがあり「行政文書ファイル管理簿」を見ることができるがインターネットではない。プリンターと接続され数枚なら無料で交付するとのこと。もちろん、PCではなく別に「書類としての管理簿」も用意されている。

 窓口の担当者もこれからが経験であり、文書の存否、文書名の特定やら文書件数(3年の場合1件の書類であればいいがそうでないと手数料がかかる)など処理が大変そうである。
とりあえず請求書5件の手数料(1.500円)を現金納付して依頼した。

 最後にこの窓口の写真撮影を求めたが拒否された。総務省の案内所ではOKであった旨説明したが、従前の考え方のようである。いろいろ諸外国の例も引いて解説したがNOでした。しかし、職員が席を離れた隙にわれわれの写真を撮影した。


               (情報開示請求書作成)


             (情報公開窓口にて)

(東京国税税局へ)

 12:00過ぎに横中署を出て、中華街入り口でランチを摂りながらお疲れ会。1:00pm過ぎに横浜駅に向い、一路東京国税局へ。

3.メンバーは3人(1人は他に所用あり)で2:00pmごろ、局の入り口前に特別に設けられた建物(東京国税局情報公開窓口)前で記念の写真。


  (東京国税局情報公開窓口−合同庁舎入口前の別建物)

 建物内に入り、情報公開請求の趣旨を説明する。応接者は、「税務情報専門官」と総務課員の2名。笑顔を見せながらの対談。

局での情報公開事務には総務課の職員6人が担当しているということ、前は法人の調査をしていたこと、これまで50件ほどの開示請求があったことなど雑談し本論に入った。

午前中、横中署へ行って請求した旨説明し、その控えを出して請求内容を説明した。情報公開制度の趣旨を強調しできる限りの開示を要求した。

 前記@は共通しているが、署でも局でも求めることにした。

横中署でもそうであったが、総務庁の監察報告書を見ていないようなので、請求にかかる該当箇所をコピーし説明した。

 A〜Dについては、該当文書があるかどうか処務に電話で確認していた。(1月から局に課税総括課ができたので処理が早くなるようである。)

具体的に話していくと、たぶんそういった文書は何らかの形であると思われるので、請求事項を含む例えば統括官会議議事録の場合、その記載があるものに限定して請求することにした。横中署と同じく、手数料(1,500円)を現金納付。

 室内のロッカーにある文書の中に閲覧できる、事務年報(平成11年)があったのでこれを見せてもらい、前記Cの苦情事案受理件数の平成7年〜11年の税目別の表があることが分かった。(本館の路線価閲覧室でコピー。)


        (室内に備え付けられた閲覧資料)

 かつて平成7年日税連公開研究討論会の資料に、苦情処理件数のデータを求めたが公開されなかったことなどを話し、また、以前は苦情相談という分野のデータがあったが近時税務相談というデータに総括されたので調べ難いなど、また、このテーマを研究している旨話した。

事務年報の表は、税務相談室での苦情事案であるから、総務課等署での苦情案件のデータを請求した。

閲覧文書の中に、閲覧目論があった。これは、私の記憶では昭和54年の大平内閣で示した「情報公開窓口」制度にもとづき用意されたものと思われる。説明では、前からあって広報室で見られたとか。

その「閲覧目録」には参考になるものが多い。総務から各課税課にいたるデータがあり、出所がア通達、イ事務運営指針、ウ政府刊行物、エ情報とあるが、このうちエ情報の根拠が良く分からない。年月日が出ているが。

インターネットでは見られないそうである。これは各税務署にも用意されているのかな?(後日電話で確認してみよう。)

本建物内には、横中署とおなじく「行政文書ファイル管理簿」を見るPCとプリンターがあった。

 最後に、室内の様子を写真撮影ができ、記念写真もとってきた。(シャッターは専門官にお願いた。サービスがいいですね。)


               (記念写真)

 5:00pm前にここを出て帰路に立ったが、のどの渇きを覚えた。ドリンクサービスはない。飲み物を用意してくることを反省。
法施行後初めての体験であり、メンバーにも疲れが見られた。

情報公開請求-報告-番外編

 昨日の情報公開請求手続に関連した番外編をお知らせします。(4月24日)

1.横中署の担当者から電話があり、請求書にあて先名の記載漏れがあった旨、署の方で補充してもらうことにした。

(実は、局でもあて先書き漏れを指摘されたとき、横中署の控えに書き漏れがあったことを気づいていたので、連絡があると思っていた。)

なお、電話の折り、局へも同じものを出してあり、具体的に説明していますので不明の点は連絡取り合って欲しい旨伝えた。

2.局での情報公開請求に関し、昨日いだいた疑問点があったので連絡を入れた。

ア 昨日の質問でこれまでの請求件数は50件くらいと聞いていたが、控えの整理番号を見ると、東局公開2001−6〜10ということなので、私共は6件目ということではないか?と質問。

 50件というのは局管内の税務署も入れた件数で、指摘のとおりわれわれは窓口6件目(請求件数が5件で、連番6〜10件目)ということである。

イ 早速横中署から局へ連絡があったようで、署への請求も中身は局と同じですね、という確認があった。

さらに、事前通知の基準について、最近国税庁の通達が出ており(ほーっ、変わってきたなー!と脳裏をよぎった。)局までは来ており、まだ署へ行っていない状況ですが、請求の回答までには署へ行くのですが・・・現時点での回答ということでしょうか?(現時点では申し送り的なものがあるようです。)と問い合わせ。

そうですね、請求時点の回答ということでお願いしたい。

ウ ついでながらお聞きしたいのですが、昨日見た「閲覧目録」は各税務署に備え付けてあるのでしょうか?

はい、あります。(ほーっ、ほとんどの税理士は知らないだろう、と脳裏をかすった。)ただ、署にないものは局で閲覧するようになります。

そうすると、地方の署で目録を閲覧して現物がなければ局へ開示請求する方法で写しを求めることもできますね。はい、できます。

 また、局で閲覧し写しを求める場合は、近くのコピー室でできますね。はい。ただし、庁にあるものは庁になります。(うーん、改善を要するようだな、と話中によぎった。)

これらは、刊行物にして売ればいいんじゃないかな(感想)。

 最後に、失礼ですが、担当は総務の○○です。それでは、専門官にもよろしくお伝えください。マナーは忘れずにということでしょう。

(感想)

 ところで、情報公開請求は各税理士会の「調査研究部」あたりは実践しておかなければならないのでは? もちろん各人のノウハウも重要ではあるが。

いままで、私達が知らなかった資料が、実は努力すれば見ることができたものがあったのではないかな。

情報公開法ができて、当局も変わろうとしている。税理士(会)の意識も変わらなければならないだろう。

今回の請求内容には、もっと知りたいことがあったのですが、5項目にした。

まだまだ、税理士法改正に関する日税連と国税局の協議内容とか不服審判官の任用方法とか、税務訴訟の指定代理人の選任方法とか、また、税務訴訟における裁判所への調査官の派遣方法とか、いろいろある。

いろんな方に体験してもらいたいですね。「情報公開法」第5条の不開示情報の内容、解釈も事例を積むことにより進化していくことだろう。 そして、日本の行政も「親切、丁寧」がモットーになっていくはずである。今後、多くの人の開示請求により情報公開制度の真価が問われるものと思われる。


(追記)

 その後、開示請求文書の特定に関し、局の担当者から連絡をもらい口頭で補正するものもあった。補正されたものはその日から1ヶ月期限の開示・不開示決定ということになる。
補正されなかった文書は、1ヵ月後の5月23日付で「行政文書開示決定通知書」が届いた。

1.東京国税局からは、上記@とBに関わる文書で、すなわち@平成12年6月に9日付課料3−6ほか8共同「資料調査課等の調査事務実施要領の制定について」(事務運営指針)、ただし「特定の業種や調査手法等に関している部分があり、これらを開示することにより、調査の実施に支障を及ぼすおそれがあり、法第5条6号イに該当するため、これらの情報が記録されている部分を不開示とした」とされ一部開示、およびB平成13年3月27日付課総5−1ほか7共同「税務調査の際の事前通知について」(事務運営指針)の文書が開示されることになった。

2.横浜中税務署からは、上記Bは局と同じく開示通知書、@は文書不存在のため不開示通知書、さらに上記Cの「苦情等索引整理簿平成12会計年度分」の文書については、開示通知書ではあるが、概要「受理年月日、局への報告日、苦情の概要、申出人の住所・氏名等は特定の個人を識別できる情報であること、また特定の法人等の名称、住所を公にすることは法人の正当な利益を害するおそれがあること、さらに、苦情に関する事務の性質上、個別の苦情の内容を明らかにすることは事務の適正な遂行に支障を及ぼすという理由で、法第5条1号、2号イ及び同条6号に該当するものとして不開示」とされ、一部開示である


 上記4月23日の開示請求に対する閲覧及び謄写を受けてきましたので報告します。
この続報は、掲示板で報告したものを転載しました。(6月6日)

情報公開請求-閲覧の報告
 
情報公開を体験する税理士の会−続報

 本日(6月5日)、「情報公開を体験する税理士の会」は、開示請求してある5項目の内、文書名が特定していて開示決定を受けた一部の文書の開示実施(閲覧及び謄写)のために横浜中税務署と東京国税局に行って来ました。メンバーは4名です。

(横浜中税務署)
 11:20am、情報公開窓口で担当者と面談。

@資料調査課等の調査実施要領の制定について(事務運営方針)(平成12年6月29日付け課料3−6ほか8課共同)−これは、昨年の総務庁行政監察報告書にあったもの。

この文書は、横中署には存在しないため、不開示となっていたが、行政監察報告書の中には、「国税局資料調査課から税務署に返戻される調査困難事案に対する調査方法等の指示の明確化の必要性」として、「総務庁(当時)の指摘を受けて、国税庁では『資料調査課等の調査実施要領の制定について(事務運営方針)(平成12年6月29日付け課料3−6ほか8課共同)』を発出し、返戻する際に返戻理由を付し、税務署における調査選定の参考に資するようにしている。」
とあるのだから、署にきていないのは理解できないと指摘した。

しかし、横中署にはないので仕方がない。なお、東京局では開示(後述)。

A平成13年4月4日付事務連絡「税務調査の際の事前通知について」

この文書は、平成13年3月27日に国税庁長官が発遣した「税務調査の際の事前通知について(事務運営指針)」が国税局を経て4月4日に税務署に届いているものである。
内容は、A4、2枚の文書である。

B苦情等索引整理簿平成12会計年度分

この文書は、開示決定通知書で一部不開示とされていたが、実質一部開示で整理番号、苦情手段(電話、口頭、文書)、重要区分(重要、非重要、簡易)、処理担当者(総務課長補佐、個人1統括など)以外は黒塗りです。

申し出人等は隠されても当然であるが、苦情の税目、苦情の対象(職員の対応、税務調査、電話応答等)などは統計数値で作成されるべきであること要望した。

<その他改善・要望事項>
今後の行政のあり方として、上記に示した以外に数カ所改善方を要望しました。
・閲覧後謄写を請求する場合、開示請求書で閲覧申請だけにしたこともあり、「行政文書の更なる開示の申出書」を書くことになっていること、また、謄写を受けた文書の「受領書」も書くことは煩雑すぎないかどうか、すなわち、1通の開示請求書の中に、これらの文書を記載して合理化できないかどうか。

・文書閲覧目録はすでに局や署で公開されていたものであるが、これをインターネットで公開できないかどうか。内容に時間がかかるのであれば、せめて目録だけでもHPに収録されると便利であること。

なお、韓国の税務行政について参考に紹介したが、これは後述する。

その後、署の近くで昼食と摂り、雑談。

(東京国税局)

 2:00pmに東京局に到着。昨日より蒸し暑い。飲み物を買い込んでから面談に向かう。

上記@の文書は、公開されたが、一部が黒塗りである。

上記Aの文書は、文書の鑑を除き内容は横中署のものと同じである。

上記Bの文書は、局の方では請求補正のため6月7日かさらに延期通知がくる予定である。

@について、一部黒塗り(不開示)の理由は、「特定の業種や調査手法等に関して記載している部分があり、これらを開示することにより、調査の実施に支障を及ぼすおそれがあり、法5条6項イに該当するから、これらの情報が記録されている部分を不開示とした。」ということが開示決定通知書に記載されていたので関心が強かった。

A4、48枚(91頁)で両面コピーである。
黒塗りの箇所がある頁は13ページで、1ページ全部黒塗りは6ページである。
この箇所は、目次によると「事案チェック集計表」となっている。

この黒塗りは、担当課と総務課で協議して決めるとのこと。
両面コピーは現物と同じスタイルである。

<改善・要望事項>
・横中署と同じ改善方要望したが、苦情整理簿は年度内に改善されそうである。

・開示請求で開示されたものも文書閲覧目録に収録されるべきである。

<参考に紹介した韓国の税務行政について>
・納税者権利憲章を受けて、韓国国税庁が「税務行政サービス憲章」通達を出しているが、これは参考にされるべきである。(内容略)

・苦情処理に関し、「納税者保護担当官」は税務署長の推薦で国税庁長官が直接任命し、納税者側に立って独立した立場で業務を行うこと。

<日本での納税者権利憲章の議員立法化の動きについて>
・参議院案と衆議院案を示しました。(内容略)

情報公開請求-閲覧-番外編

 昨日の「情報公開請求−閲覧」の続き。

今日(6月6日)、局の税務情報専門官から電話があり、その中で、昨日閲覧時に要望した事項について、公聴(広報官)制度(本年新設)にそって要望事項の手続をとったという回答があった。

行政も変わろうとしている。私たちの意識も変わらなければならない。

韓国では、IT化により税務署の職員のうち45歳以上が少なくなってきているといわれる。
日本でも役所、企業を通じて今後ますますIT化による変革が起きてくるであろう。

必要な改革、避けられない変革に対応できる意識改革が求められる。
それにしても、税理士会の意識改革はどうなっているのか疑問が残る。